続デジタルネイティブ

概要

前回 の続き

青年期

2017–2019, 大阪大学

思いつくままに書いているので時系列がおかしいです.そのうち修正します

2018年4月に大阪大学基礎工学部システム科学科知能システム学コースに進学した 1 . 当時の実家から自転車で20分ほどの距離であったので毎日自転車通勤していた. ちなみに同じ学科・コースに編入した同期は私を含めて5人で,そのうち3人が博士後期課程に進学し博士号を取得した. 多分ほかのコースの同期に比べてかなり高い割合のはず.

大学に入ってまず衝撃を受けたのはとにかく人の多さである. 昼に食堂に行くにも教室を移動するにも人が多すぎてかなりつらかった. 特に年度初めにある健康診断の行列が苦痛であった. 豊中キャンパスの図書館下食堂(通称カンシタ)で販売されている天津麻婆丼(通称テンマ)は阪大生のソウルフードとされ,例に漏れず私も好んでいた. カンシタ前の自動販売機はモンスターエナジー(以下,モンエナ)が190円であったことからテンマとモンエナの悪魔コンボをよくキメては3限で気絶していた.

憧れのキャンパス生活が始まりなんかサークルでもやろうかと色々探したが結局は高専時代と同じく吹奏楽をすることにした. 大阪大学吹奏楽団 という名前のサークルに所属した. 楽器は変わらずトランペットである. 高専時代は全員で30人くらいの小規模バンドだったのがいきなりトランペットだけで20人・全員で90人くらいの大規模バンドになりこれまた衝撃であった. 全員が全部の曲を演奏しなくてもよいということも文化の違いであった. 曲も難しいものばかりでかなり苦戦した. 当時のサマーコンサート定期演奏会の曲目がまだのこっていた. 中学高校とずっと吹奏楽をやってきた人でもあまり知らないような曲が結構多い. とにかく難易度が高いので練習が大変であったがとても楽しかった.

授業も多様で面白かった. 元々は制御系の学科だったこともありロボット工学,制御工学,最適化などの授業が多く楽しかった. せっかく総合大学なので他学科の授業も受けてみたいと思い,大学院人文学研究科の Bor Hodošček 先生の自然言語処理の授業を受け, Jurafsky の Speech and Language Processing を輪読して簡単な品詞タグ付けを Ruby で実装したりした. 大学院の授業にもぐったりしてみたがほとんどは難しすぎてすぐについていけなくなり離脱した.

同時期に 株式会社アルカディア という箕面駅すぐ近くの変なIT企業でバイトを始めた. ホームページに音声合成だとか音声波形分析だとか書いていたので面白そうと思い応募したが,実際の業務内容は社内システム修正のお手伝いだった. PHPで書かれた社内システムをGoでイケてる感じに書き直すというだけなのだが,この時にgit/GitHubやDockerの使い方を学んだ. それまでなんとなく使っていたブラウザが,裏側ではどのように動いているのかなどweb系開発の基礎知識も学ぶことができた. このライブラリのこのバージョンはセキュリティの問題ですぐにアップデートするべきだが今使っているシステムのこの部分が動かなくなるのでまずは別の箇所を修正する,だとか多分web系あるあるぽいことを体験できた. 同時にこの時,web系開発をずっと続けるのはつらそうだなとも感じた. 当時親の事業がイカんことになり家に全然お金がなくサークルなどという贅沢をするにはバイト必須だった. アルカディアでのバイトをする前はコンビニと塾でバイトしていたが学業との両立がつらくなりすぐ辞めてしまった. その点アルカディアはシフトが極めてゆるく週初めにいつ行きますとかメールしてその時行けばよかったので学業とも両立もしやすかった. 卒業したらなんかIT企業で働くんだろうな,くらいしかまだ想像のついていない学生のみなさんはそういう企業でバイトしてみるといいかもしれない.

3年が終わり研究室配属が近づいてきた. この学科の研究室配属は学生が研究室の希望を順位づけし,また研究室側も学生を順位づけして 安定マッチングアルゴリズム により決定するという伝統らしい. 音に関する研究がしたいと思っていたので 飯國研 が第一志望だった. 飯國研で当時准教授だった 川村 新 先生 のもとで研究したいとアピールしまくっていたが,なんと4月から川村先生は京都産業大学へ栄転されることが告げられた. 博士後期課程まで行くことを当時すでに意識していたので,飯國研に行けたとしても今後5年間音の研究をできるか不安があった. そういうわけで飯國研は第一希望とはせず,外部の大学院進学を検討することにした. 研究室の希望調査はダメ元で学科内で最も人気が激しい 石黒研 を第一希望にした.

4年生になった. 安定マッチングアルゴリズムの結果,第3希望くらいに書いていた 潮 俊光 先生 の研究室となった. 潮研は編入同期も一人いて心強く,先輩・先生方の面倒見がよかったため結果的には非常に良いマッチングであった. 卒研のタイトルは「強化学習を用いたQoS に基づくアンチジャミング移動制御」であった. この時せっかく強化学習やモデル予測制御を勉強したので,今の研究にも何かの形で活かしたいものである. ちなみに現在の妻とはこの頃に, 関西学生メモリアルコンサート (通称メモコン)という演奏会を通して知り合った.

さて,大学院をどこにすべきか. 学部3年の当時は極めて漠然と「音の研究がしたい」くらいにしか考えていなかったが,いろんな授業を受けたりTwitter(当時)を見て少し解像度が上がっていた. 特に興味が強かったのは「音源分離」という研究である. 音源分離は自分の経験と強く結びついていた. 高専時代の吹奏楽部はマーチング 2 もやっていたのだが,マーチングの楽譜は普通の吹奏楽曲と違って楽譜がないことも多かったので耳コピして楽譜を作る必要があったのである. 当時はAudacityでバンドバスフィルタをかけたりしてスペクトルのピークを眺めながら頑張って何の音がなっているのか推定しようとしていた. もちろんそれだけでは全然楽器の抽出にならないので耳コピの役には大してたたなかった. 当時Twitterでフォローしていた 北村 大地 先生 が博士号をとりポスドクをされていた 東大 猿渡研 に連絡をとりいろんなお話を聞いた. 近い分野の研究者がいる他の大学として 京大 河原研 の吉井先生(当時),そして首都大(当時) 小野研の情報をこのとき得る.

ムリと言われた阪大に頑張って入ったんだしもうちょい頑張れば東大さえも夢ではなかろうという浅い考えがった. そんなわけで東大猿渡研を第一志望とし,京大 河原研,首都大 小野研を併願した. 入試のスケジュールは以下の通り:

  • 2018年8月6日 京都大学,筆記
  • 2018年8月7日 京都大学,面接
  • 2018年8月9日 首都大学東京,筆記・面接
  • 2018年8月21日 東京大学,筆記
  • 2018年8月21日 東京大学,面接 もちろんお盆などなかった. 今振り返ると極めて無茶なスケジュールである.

結果は東大も京大もむなしく不合格,首都大だけ合格であった. めちゃくちゃ頑張ったが結果はまるで伴わず大きな挫折であった. 家族からは「せっかく苦労して阪大まで行ったのに東京の私立大学行ってどないすんの」などと止められたりもした. それくらい関西では首都大学東京の知名度などなかった. 音源分離の研究をすると決めていたので,潮研で進学する選択肢はもたなかった. 浪人も頭によぎったが,いろんな人に相談した結果,「小野先生のところでしっかり頑張ればきっと大丈夫」と思い首都大への進学を決定した. あれから7年経った今の結果だけを見ると,小野研究室でなければ学位も取れず就職もできなかったと思われるため,やはり当時首都大に進学していて大正解であったと感じる.

2019–2021, 東京都立大学大学院 博士前期課程

to be continued…

  • 東京生活の始まり
  • 小野研生活の始まり
  • 鳥取で学会
  • ICA ドイツ
  • コロナの始まり
  • DC1 申請書つらい
  • LINE インターン
  • オンライン国際会議つらい
  • CREST
  • DC1 採択の喜び

2021–2024, 東京都立大学大学院 博士後期課程

to be continued…

  • 目の手術
  • 韓国語しゃべれるようになった
  • ICA 韓国
  • ICASSP ギリシャ
  • 就活つらい
  • 博論つらい

2024–現在, 東京都立大学 助教

だいたい 都立大助教体験記 (1 年目) に書いた通り. 3行でまとめると

  • ドイツたのしかった
  • 入籍した
  • 忙しかった

である.

2025年2月に友人の結婚式に参列した. 参列者に Resonexus Wind Orchestra (通称レゾ吹)の指揮者がおり,6月に演奏会するから出ないかと誘われた. 当時の私は研究が行き詰まっていた. やはり音の研究をするからには音に触れる生活が必要であろう. そういえば最近音楽してないなと思い勢いで参加を決めた. 彼は軽いノリで誘ったと思われるが… 6年ぶりくらいに楽器ケースを開けたくらいの感じであったが,練習のたびになんとかカンをとりもどし,最低限の役目は果たせたと思われる. 音響信号処理の知識を得た状態で久しぶりに音楽活動をしてみると色々と発見があった. スペクトログラムを見れば倍音がどれくらい鳴っているかや数秒前までのピッチの変動も見ることができるため,チューナーがわりにできる. 柴田先生 からある日,リアルタイムでスペクトログラムを書いて横軸に音名を書いたやつ作ってくれと頼まれた. 今時ChatGPTに頼めばすくに作ってくれる, python でリアルタイムCQTを実装し共有したところ喜んでくれた. 後日調べてみたら iPhone アプリがすでにあった 3. いわく,基本周波数推定とか高度なことをしなくてもいいから,今鳴っている音がどれくらいの高さでどれくらい強いのかだけわかればいいそうだ. たしかに言われてみればユーザ側が使っているうちに学習するから可視化だけで十分ではないか. レゾ吹の練習で指揮者にスペクトログラムを見せてみたところ新鮮な反応であった. むしろチューナーよりも断然情報量が多いので吹奏楽やオーケストラの現場でもっと使われてもいいんじゃないのか. インパルス応答の概念を学んでからは,マウスピースだけで唇を慣らす練習は意味がないのではないかと思い始めた(エリックミヤシロの教本によるとマウスピースだけのときとマウスピースを本体に付けたときでは唇の形が違うそうである!). 全国の吹奏楽部のみなさん,音響信号処理を勉強しましょう.

二年目もがんばります.

  1. 当高専時代の担任には「お前じゃ無理」と言われていた大学に合格できてのでもう自己肯定感がマックスであり当時のイキり具合は このサイト で確認できる.消したいが手元のPCにログイン情報が残っていなくて消し方がもうわからない… 

  2. こんなやつ (https://www.youtube.com/watch?v=pLlUpuC-wcU) 

  3. TB Spectrogram 




    Enjoy Reading This Article?

    Here are some more articles you might like to read next:

  • デジタルネイティブ
  • 한국어 일기 도전
  • 都立大助教体験記 (1 年目)